夜

  寒冷前線が降りてきたシンシンと冷える深夜
  路面から冷気とも温気ともつかぬ湯気が立ち昇っていた。
  頼みの綱の鳥ももう見えない。
  天井にはぺろりと夜が張り付いて、星たちを縫いとめる。
  ピンクの豚の顔を持つ痩せぎすの男は
  ビルとビルにぎゅうぎゅう挟まれながら泣き声をあげている。
  その声が虚空にこだます。
  遠くまで、遠くまで。
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